俺の世界には、君さえいればいい。
仕返しというものは昔から嫌いだった。
それだけはするなと父親からも教え込まれていて、入退院を繰り返す母さんからも言われていたこと。
だからこれは仕返しではない。
俺は大切な人を守って、そして横山 あいりの薄汚い魂胆を今日で終わらせるため。
「おい…、なんだよこれ…、」
「横山…?おまえ、櫻井に怪我させたのはお前なのか……?」
部員たちの疑問は、声にならない本人の代わりに何よりの証拠が教えてくれる。
“…やっぱり、誰かにしてしまったことは自分に返ってくるんだよ…。俺だって、結局は横山に騙されて終わった…”
“…山本先輩もあいつに良いように使われた駒ってことですか”
“…そうだ、…ほんと、情けねーよな…。部でもハブられてんだよ俺…いま、”
最近のスマートフォンは音質もハイクオリティで助かった。
ファミレスだから周りの雑音も入るかと思ったが、そんなノイズはきちんと消してくれている。
「なっ…!なにしてくれてんのよあいつ……!!」
「なに、してくれてんのよ…あいつ…?」
「っ…、ちがっ、これは…っ、ちがくて…!!」
いいや、ちがくない。
こいつはいま、無意識にも飛び出した言葉で認めてしまったのだ。