俺の世界には、君さえいればいい。




“…でも、アキレス腱断裂までにはならないように止めてくれたでしょ、山本先輩”


“あ、当たり前だ…!そんなの、出来ねーよ、”



記録はここまで。


本当は最後の会話は切っても良さそうだったが、山本先輩はあんなことをする男じゃない。

だからそんな部分を横山 あいりに伝えたかったってのもある。



「お前がやったことはこれだけじゃない。どれだけ…、どれだけ周りを傷つければ気が済むんだよ」


「ちょっ、ちょっと待ってよ…、櫻井はあたしにそんなことしないでしょ…?足には防具ついてないんだから……っ」


「そう。だから最悪、…アキレス腱断裂するかもな」



やばい───と。

それは、この場にいる全員が感じ取ってしまったのかもしれない。


竹刀を握って地面を蹴ったのが合図。


頭は守られてるから大丈夫だろ、剣道部マネージャーならこれくらいは慣れてるだろ。

だから俺は本気で向かった。



「きゃあ……っ!!」



と、目の前の悲鳴が最後。

けれど俺の動きは横山に竹刀が当たるギリギリで止められていて。


顧問と部長。

ふたりが押さえ込むように俺を止めて、横山はしりもちをついて踞っていた。



「…部長もこんな女に騙されてるんですか、」


「そうじゃない。ここで手を出したお前を退部にさせたくないだけだ」



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