俺の世界には、君さえいればいい。




別に俺はそれでもいい。

この部にだって最初から入りたくて入ったわけじゃないから。


だけど、この部長だけは他とは違った。

「部長がこの人だからまぁいいかな」と、部活見学のときに思ったから誘われて入ったのだ。



「…こいつは俺や山本先輩だけじゃないんですよ。なにも関係ない俺の大切な人を…、ズタズタにして泣かせたんだ」



てんとう虫に話しかけてるような女の子だ。サンタさんを信じてるような女の子だ。

目立たず生きて、大人しく生きて、それでも数少ない良い友達に恵まれて、彼女なりに楽しく学校生活を送っていたような子だ。


それを…、それを。



『も、もう……私に…関わらないでください…っ、もう話しかけるのも…だめです、』


『私…夢みたいでした、…本当に…夢みたいで、毎日ありえないことばかりで…っ、』


『たす……けて、ほしい……っ、櫻井くん…っ、助けて…、』


『嫌いに…ならないで……っ、横山さんのほうに行かないで…、助けて、くるしい……っ』



あそこまでさせる理由がどこにあった。

あんなに追い詰める理由がどこにあったっていうんだよ。


俺が欲しいから?冗談じゃない。

そんなくだらない理由で由比さんを泣かせられたことが一番許せない。



< 229 / 253 >

この作品をシェア

pagetop