俺の世界には、君さえいればいい。
今までも俺に近づくために色んなやり方をしてきた女子はたくさんいたけど、それは誰も傷つけはしなかったからスルーできた。
でも、今回ばかりは無理だ。
「許せねぇだろ、…そんなの」
「…わかってる。俺だって山本とは昔からの知り合いなんだ。
あいつが卑怯なことする男じゃないってことは俺も知ってんだよ」
「だったら部長だって腹立ってるはずでしょ、」
「あぁ、立ってるよ。だからお前を止めてんだろ。…先生も」
はっと向けてみると、顧問は静かに俺から腕を離した。
そしてしりもちをつくマネージャーに手を貸して立たせると、女子生徒を助ける動きをさせておいて正反対の言葉を言った。
「出ていけ」
「……え…、ちょ、ちょっと先生…?」
「下心があってマネージャーになる女子は今までにも居た。だから部員に恋しようが、そこは自由だ」
山本先輩が言っていたとおりだ。
誰かにしてしまったことは、必ず自分に返ってくると。
いま顧問の先生が放った言葉は、いつかに横山が由比さんに対して馬鹿にするように言ったものと同じだ。
「だけどな横山、お前は度ってもんを越しすぎてる。これ以上、今までの生徒が作り上げてきた誇り高きうちの剣道部に泥を塗るな」