俺の世界には、君さえいればいい。
泣き落としだ。
そう言われて、わざとらしい涙と本当なんだろうなって悔しさの見える涙を浮かべたマネージャー。
それに騙されるような部員なら横山と一緒に退部してくれていい。
けれどあんなボイスメモを聞いて、普段は大人しい俺の怒りを見た男たちは、誰ひとり擁護する者はいなかった。
「こ、こっちからやめてやるわ…!こんなむさ苦しい部っ!!
あーあっ!あたしの青春めちゃくちゃ無駄にしたぁっ!!」
「おい、待って」
俺が引き留めると、すぐに顔を向けてくる。
まだ何かを期待している目。
「これの腹いせにまた同じことを由比さんや他の生徒にやったら、
次こそ俺はお前を打ち込み台にして今以上にブサイクな顔にするから」
「はあ!?だれがブサイクよ…!!あたしちょー可愛いしっ!!」
「外見は内面を映し出す何よりの鏡。俺は人を見る目だけは持ってる」
「うっ、うっさい……!!!」
それは母さんに昔から言われ続けていたことだった。
主計は私に似て扱いづらいところがあるけど、母さんと同じで人を見る目はある。
だから素敵な女の子をお嫁さんにするんだよ───。
だから俺は由比さんを選んだ。
これに間違いはない、それだけは自信を持って言える。