俺の世界には、君さえいればいい。




じょうろをひょいっと奪うと、「わっ」なんてかわいい声が上がって。

そのまま引き寄せるように腰に回せば「きゃっ」と、真っ赤な顔をして俺の心を突いてくる。



「さ、櫻井くん…、ここ学校だから…っ」


「…誰も見てないです」


「や、でも…っ」



まぁ見ててもするけど。

それに今日は由比さんに、とあることを伝えに来たってのもある。



「んっ…っ、」



とろけるような柔らかい感触とは裏腹に、ビリビリ全身が痺れる。

それがクセになるというか、雄が本来持っている欲が掻き立てられる感覚だ。


もっと欲しい、まだ足りない。

そうは思いながらも必死に応える由比さんを見ると、たまらなくなる。



「───…明後日、卒業式のあと、由比さんの教室で待っててほしくて」


「…なにか…、あるの…?」


「迎えにいきます。なにがあるかは、そのときのお楽しみで」



こくっとうなずいてから、身体を寄せてくる。

こうして慣れない中でも由比さんなりに甘えようとしてくれるところ。

俺はすぐに抱きしめた。



「…あの、やっぱり俺の家に…来ませんか、」


「っ、櫻井くん順序は大切だよ…!」


「あっ、…そうでした、」



また縛ってしまうかもしれないから。

あれは無意識でありつつも意識的だったなんて言えない。


ふわっと、どこからか舞い降りてきた花びらが由比さんの髪に留まって。

俺はそれを取るふりをして、またひとつ落とした───。








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