俺の世界には、君さえいればいい。




ぽかぽかと暖かな日が射す校舎、真っ青な空には白い雲がのんびり伸びて、校庭を覗くと花開いた桜が所々に見られて。

まるで今日のためにすべて揃ったんじゃないかと思わせられるくらい。


今までで一番の卒業式日和だった。



「先輩…っ!絶対また遊びに来てくださいね…!!」


「もちろん。まだまだうちのバスケ部は頼りないからね」


「じゃあ卒業しないでくださいよ~!!」



花のコサージュを付けた主役を取り囲む後輩たちは、みんな涙を流しつつも笑顔。

そういうものとは縁のない私は、ちょっとだけ羨ましく思いつつ耳を傾ける。



「先輩!大学行っても野球やるんすか!?」


「いや、小中高9年やったからもういいわ。いいかげん彼女作らせろ」


「ははっ!なんすかそれ!!」



本当は茶道部に入ろうかと考えなかったこともなくて。

だけど私が身に付けていた本格的な作法と、部活で使われる作法にはちょっとだけ誤差があったりもするから。


そもそも目立ちたくもなくて家柄も隠すつもりだったから、入部はやめようと決めた入学したての頃。


「てんとう虫観察部」とかがあったら入りたかったんだけどなぁ…。



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