俺の世界には、君さえいればいい。




結婚するまでは手を出すなよ?なんて、毎日のように脅されてる俺でもあるから。



「……俺、なにしようとした…?」



記憶は曖昧だ。

曖昧のあやふやなのに、はっきり覚えているという矛盾。


だけど名前を呼んで笑ってくれて、そんな顔を見てしまったら無意識だった。


俺は───…キス、しようとした。



「だよな……?そうだよな…?あれ、ぜったいそうだったよな……?」



本当に無意識で、気づいたときには重ねようとしてて。

だけど由比さんも由比さんだ。


目……、閉じてたし。



「でも嫌われてなくて良かった……」



最近はずっと避けられていて、目を合わしてくれるどころか名前すら呼ばせてもらえなかったから。

俺は毎日毎日、なにかしてしまったんじゃないかと悩みつづけてた。


でも……あんなにも由比さんらしいかわいい理由だなんて、そんなのもっと愛しくなる。



『主計、この3人の中から話してみたい子はいるか?』



俺の誕生日は5月だった。

だから5月の時点で16歳になっていて、婚約者として考えられている女性を父さんには知らされていたのだ。



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