俺の世界には、君さえいればいい。
関わる度に櫻井くんの知らない顔を知っていく。
そうすると、気持ちがどんどん大きく募っていって。
「早川さん、なにか要るものとかあれば───きゃ…っ!わ…!」
とりあえず一段落して、お手伝いに向かおうと立ち上がって向かった私は、なにかに躓くように体勢を崩してしまった。
よろっと傾いた先───ペンキ色に濁った水が入ったバケツ。
「うそっ!かなの!?」
バシャッ!!!
転がったバケツ、飛び散った水。
そうなるって分かっていたように離れさせられたPOP。
「おー、また豪快にやったなぁ由比。床拭いとけよー?」
「…はい、」
濡れた……。
櫻井くんから借りたカーディガンが、ペンキの付いた水に……。
どうしよう、すぐに洗わなくちゃ…。
「こっちはセーフだけど……かなの大丈夫!?なに、引っ掛かった!?」
「わ、私ちょっと洗ってくる…!ごめんねゆっこ、それと早川さん…っ」
「あっ、ちょっとかなの…!」
「床もそのあと拭くからそのままにしておいて…!」