俺の世界には、君さえいればいい。




今だって私を抱き寄せるゆっこに対して敵対心を全身から出しているのは……櫻井くん。


周りの声なんか気にすることなく、私を心配してくれるのも櫻井くん。

また私が泣いてしまったことに自分を責めまくっているのも櫻井くんなのだ。



「でもほら、優子ちゃんとも話してるし大丈夫じゃない…?」


「でも櫻井くんとあそこまで話せるなんていいなぁ」


「ね、でもやっぱりあそこに由比さんが混ざってるのは違和感だよねぇ~」



だとしてもだ。

私と櫻井くんが少しでも関わった瞬間、こういった声は毎日のように飛び交っている。



「由比さん、」



なんとか涙は引っ込んで、すぐに退散しようと意気込んだ私に近づいたのは櫻井くんだった。

とんっと両肩に手を置くようにして顔を覗き込んでくる。



「帰ったらまずは温かいお風呂に入ってください」


「っ、うん」


「これ以上からだを冷やさないように…なにかあったら俺に連絡してくれていいんで」


「…うん」



スマートフォンには櫻井くんのアドレスはちゃんと登録されていて。

メッセージアプリのほうにも入っている。



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