俺の世界には、君さえいればいい。




校内中どこもかしこも賑やかさをもっともっと盛り上げる音楽が流れていて。

流行りのJ-POPに、若者が好むK-POP。


どこを歩いても広がる甘い香り、香ばしい匂い、はしゃぐ子供たちに中学生、他校の高校生。

お父さん、お母さん、中にはおじいちゃんおばあちゃんまでもが来ていたり───な、文化祭当日。



『ごめんねぇかなの…。今日もお母さん達ちょっと忙しくてね…』


「ううん、大丈夫。写真とか撮れたら送るね!」


『送って送って!ちゃんと顔付きで送るのよ?』


『お父さんも応援してるぞ!かなの!』



応援って……なにもしないんだけどな…。

するとすればクレープを作るクラスメイトのうしろで雑用だ。



「うん、ありがとう」



年に1回開催される新しい着物を披露するコンテストにて、由比グループは必ず名を揚げていて。

それだけじゃなく、有名な歌舞伎界で使われる和服の製作を頼まれたり、ドラマや映画で使われるものを作ったり。


毎日毎日大忙し、おかげさまで大繁盛しているらしい。


だから今日だって、忙しいんだろうなって分かっていたから誘わなかった。

けれどお母さんとお父さんから届いた1本のビデオ通話だけでも大満足だった。



< 70 / 253 >

この作品をシェア

pagetop