俺の世界には、君さえいればいい。
「かなのー、客寄せ行くよー?」
「……、」
「ちょっとかなのー?」
「あっ、うん…!」
次から次に出るゴミをまとめながらも、私はひとりの男の子を待っていた。
来るかな…?
本当に来てくれるかな…?
そんなふうに待っていたけれど、彼のクラスはお化け屋敷。
出し物の中でもかなり人気のはずだから忙しいのかもしれない。
「1年B組、フルーツたっぷりクレープ販売してまーす!一口食べたらやみつきでーす!!」
看板を持ったゆっこは恥ずかしさすらないくらいにお腹から声を出した。
「ぜ、ぜひ来てくださーい」と、私も無意味な発声をぽつりぽつりと。
櫻井くんを待ってるだけで何もしないわけにもいかないから、とりあえず私も客寄せに同行することにして。
「ねぇお化け屋敷にいる人めちゃくちゃイケメンじゃなかった!?」
「あの黒いマント着た人でしょ!?」
「そうそうっ!ねぇもう1回いこっ!!」
お化け屋敷にいる、黒いマントを着たイケメン…。
それだけで脳内にほわわわ~んと、イメージ像が浮かんでしまうからすごい。