俺の世界には、君さえいればいい。




通りすぎる女の子たちの声を聞いて「本性はムッツリプリンスのくせに」と、ゆっこは鼻で笑った。



「黒いマント着てるんだ…」



なんのお化け役をするの?と、すこし前に聞いてみたとき。

櫻井くんは「秘密です」の一点張りで教えてくれなかった。


あとで行ってもいいかな…。

怖いものは苦手だけど、そのお化けのひとりが櫻井くんだと思えば怖さが半減してくれる。



「ゆうこ…?ねぇ優子じゃない…!?」


「えっ、やだサキぽん!?めちゃくちゃ久しぶりじゃん!!」


「そうじゃん優子ここの高校だったよね…!!」



と、ゆっこの知り合いらしき数人の女の子は私たちを囲った。


これは静かに退散したほうがいいかも…。

こういう再会を果たしてる生徒はたくさんいたし、きっと優子もそのひとり。



「あたしの中学の同級生なのっ!」


「そうなんだ…。じゃあ私は教室に戻りつつ代わりにやっておくね」


「ありがとっ!かなの!」



ううん。

久しぶりに会えたなら話すこといっぱいあるだろうし、すこしくらいサボったってバレやしない。


文化祭なんだもん。

それに私は1年A組が気になってたりして…。



「覗くだけなら…いいかな、」



< 72 / 253 >

この作品をシェア

pagetop