俺の世界には、君さえいればいい。
通りすぎる女の子たちの声を聞いて「本性はムッツリプリンスのくせに」と、ゆっこは鼻で笑った。
「黒いマント着てるんだ…」
なんのお化け役をするの?と、すこし前に聞いてみたとき。
櫻井くんは「秘密です」の一点張りで教えてくれなかった。
あとで行ってもいいかな…。
怖いものは苦手だけど、そのお化けのひとりが櫻井くんだと思えば怖さが半減してくれる。
「ゆうこ…?ねぇ優子じゃない…!?」
「えっ、やだサキぽん!?めちゃくちゃ久しぶりじゃん!!」
「そうじゃん優子ここの高校だったよね…!!」
と、ゆっこの知り合いらしき数人の女の子は私たちを囲った。
これは静かに退散したほうがいいかも…。
こういう再会を果たしてる生徒はたくさんいたし、きっと優子もそのひとり。
「あたしの中学の同級生なのっ!」
「そうなんだ…。じゃあ私は教室に戻りつつ代わりにやっておくね」
「ありがとっ!かなの!」
ううん。
久しぶりに会えたなら話すこといっぱいあるだろうし、すこしくらいサボったってバレやしない。
文化祭なんだもん。
それに私は1年A組が気になってたりして…。
「覗くだけなら…いいかな、」