俺の世界には、君さえいればいい。
自分のクラスに戻るついで、サラッと。
そんな高度なテクニックができるか不安だけど…。
「キモいんだよブス、消えろ」
───…え…?
くるっと振り返ると、もう人混みに紛れてしまっていて分からない。
「……私に…言った、よね…?」
たとえば友達同士の会話がたまたますれ違ったときに聞こえたとか。
そういうの、よくあるから断言はしたくなかったけれど…。
でも今の会話を友達同士でするって…そんなのただの喧嘩だ。
「…気のせい…?」
たまたまそう聞こえただけ…?
キモいんだよブス、消えろって。
ちがう、気のせいなんかじゃない。
それはもうハッキリ聞こえた。
「あーー!!おまえ由比だろ…!!」
「…!」
そしてまた、足止めを食らってしまう。
階段付近で呼ばれた名前に振り向くと、そこには思い出の中にあるより身長が伸びている人。
「俺のこと覚えてる!?」
「…晴哉(はるや)、くん…?」
「そうそう!おまえぜんぜん変わんねーな由比!」
ぽんぽんと私の頭に手を乗せてくるのは、小学校から中学まで同じクラスだった男の子。