俺の世界には、君さえいればいい。
「…か、かっこいい……」
「っ!い、行ってきます、」
「あっ、えっ、声っ!?あっ、わっ、」
出ちゃってた……よね……!?
言っちゃった…。
言っちゃった…!!
どうしようとんでもないことを言ってしまったような気がする…!
「がんばれ───…主計くん」
小さく小さく、背中を向ける紺色の胴着へ送った。
袴姿だって、照れたような顔だって。
私の名前を頑張って呼んでくれるところも、それなのに敬語なところも、人気者なのに媚びないところも。
私なんかに声をかけてくれて、仲良くなりたいって、そう言ってくれて…。
「───はじめっ!!」
両者が竹刀を合わせて座ると、審判は声を張って合図した。
間合いをすぐに詰める両者。
防具を身につけて竹刀で立ち向かう姿は本当にお侍さんみたいだ…。
「ヤァァァーーッ!!!」
「オォォォァァァァーー!!!」
まるでそれは動物同士がお互いに威嚇し合っているみたいだった。
相手に気迫を与えたり、自分自身を鼓舞させたり、理由は様々なんだろう。
すごい……。
普段の櫻井くんの声からは想像も出来ないくらい図太くて高くて低くて、それでいて雄を感じる音。