跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「仕方のないやつだな」

揺れを感じて、どうやら千秋さんに抱き上げられたようだと気づく。落ちないように、朦朧としながらも彼の首元に腕を巻きつかせた。

「なんだ、愛佳。無意識のときばかり甘えてきて。相変わらずかわいいやつだな」

もうペットでもなんでもいい。好きな人から〝かわいい〟と言われるのはやっぱり嬉しくて、ふにゃりと笑みをこぼした。

「意識のあるときに、こうやって甘えられたいんだがな」

千秋さんがなにか言っているが、だんだん聞き取れなくなっていく。

「頑張るのはいいが、方向性が違うんだよなあ。まあ、それが愛佳のかわいいところか」

額にコツンとなにかが当たる。

「愛しいやつだな」

そのまますりすりと擦られているようだが、それがなんなのかがわからない。
ただ、やけに千秋さんの息遣いを近くに感じる。気になって確かめたいのに、もう少しも目が開けられない。

「不安があるなら、なんでも話せよ。まあ、なんとなく理由は掴めてきたが」

ふわりとどこかに下ろされると同時に、千秋さんのぬくもりが離れていく。とっさに腕を伸ばそうともがいたが、体が重くて自由が利かない。そこに、ふわふわの毛布を掛けられた。

「おやすみ、愛佳」

額に柔らかいものが触れるのを感じながら、完全に眠りに落ちていく。

「俺から逃げられると思うなよ」

そんな不穏な言葉は、私にはいっさい届いていなかった。

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