跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
翌日は、加藤のギャラリーに岸本さんが出社してきた。私にあんな話をしたというのに彼女には少しも変わったところがなくて、いつものように社員の問いかけに対応している。

私の方は、どうしても彼女を正面から見られなくなってしまった。岸本さんは、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべて時折私へ視線を送ってくるが、極力気づかないふりを押し通している。

もう私と結婚したというのに、千秋さんはなぜ関係のあった女性を自身の側におくのか。そうしてもいいほど、岸本さんが優秀な人材なのだろうか。それともほかの理由があるのか、私には少しも理解ができない。

ディスプレイを確認して回る岸本さんを、そっと覗き見る。
彼女の真っ赤な唇を目にすると、もしかしたら今でも密かに千秋さんと関係しているのかもしれないと、根拠のない被害妄想に襲われそうになる。慌てて振り払おうとしたが、一度抱いた疑念はなかなか消えてくれない。

「あら、愛佳さん」

不意に顔を上げた岸本さんと目が合ってしまい、声をかけられた。こちらが見ていたのは勘付かれていそうだと、気まずくなる。

「お疲れ、様です」

彼女の感じのよい笑みに自分も同じように返したいのに、引きつってうまくいかない。

「愛佳さん、新しい提案をしたんですって?」

月替わりに商品をリリースする話だろう。

「はい。色違いの新商品を、毎月出せたらと……」

以前千秋さんも興味を持ってくれた新橋色のような、繊細な色遣いの商品を提供できたら面白そうだ。

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