跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「ふうん。まあ、誰でも考えつきそうな提案ね」

言葉は嫌味なのに、表情はにこやかなままだ。なんでもないようにさらりと言われて、どう捉えていいのかがわからなくなる。

「もう少し、独自性のある案は出せないものかしらね。窯元の方ももっと機械化できないかとか、内部の改革案も同時に出していく必要もあるし」

よい案だと思ったからこそ、夜更かししてまで内容を詰めて最速で提案した。
自力で頑張ったのだから褒めて欲しいなどと言うつもりはない。それに、岸本さんの指摘されたことなど私もわかっていた。私はそれを承知のうえで、この企画を上げた。

「独自性の話は、今じゃないと考えています。それに、窯元の話はすでに進められています。そこについて、岸本さんが助言できる話ではないはずですが」

必死に感情を押し殺して抑揚のない声で話すと、わずかに岸本さんの表情が険しくなった。

出会った頃、千秋さんが言っていた。『余力があるときなら、いくらでもチャレンジすればいい。だが、瀕死の状態でそんな博打のような策をとっても、倒れるときの傷は深くなるばかりだぞ。取り返しがつかなくなる』と。

少し上方を向きはじめた加藤製陶だけど、まだせいぜい瀕死の状態を脱しつつある程度だ。この先どう転ぶのかは、今にかかっている。

そうだとしたら、奇をてらったような策を打ち出す前に、せっかく興味を持ってもらったものをもっと前に押し出して集客に尽くすべきではないか。守りに入ったと言われるかもしれないが、過去のような一時の流行ではなくて長く続く人気を得るためには、万人受けするようなところからはじめていきたい。

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