跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「及川愛佳は加藤製陶の社長の娘であり、再建のカギを握る重要な社員なのだが」

「え?」と隣を見上げた私に、千秋さんが一瞬優しい笑みを見せた。てっきり責められるのだろうと連れられてきたが、違うのだろうか。

「再建の、カギって……」

岸本さんにジロリと睨まれて肩を竦ませると、膝の上で握りしめていた手に隣から大きな手が重ねられる。
岸本さんがそれを、忌々しそうに一瞥した。

「そうだ。その愛佳に、見当違いな言葉をぶつけたな。もしそれを気に病んで、愛佳が仕事を辞めたらどうしてくれるんだ」

咎める口調ではないし、内容はからかっているのかと思わせるものだ。けれど、威圧感をひしひしと感じる。
私を守るような千秋さんの発言に、岸本さんのこめかみがピクリと引きつった。

「しゃ、社長の娘とはいえ、素人レベルの考えしかできない彼女になにができるっていうんですか? 真っ当な意見を言われて、しっぽを巻いて投げ出すのならそれまででしかなかったのでは」

さんざんな言われようだが、この場の空気が落ち込むのを許してくれない。固唾をのんで、ふたりのやりとりに耳を傾ける。

「ずいぶんな言いようだな。愛佳の考えをそんな程度にしか捉えられないのだとしたら、岸本、お前を選んだのはやはり俺のミスだな」

千秋さんの真意はわからないが、お願いだからあまり彼女を刺激しないで欲しい。時折こちらを睨む彼女の顔が、とんでもなく怖くなっている。

男女の関係にあったからこそ、ここまで遠慮なく言えるのだろうか?
その可能性に胸は痛むが、このふたりに挟まれているとそれどころじゃなくて、ただただ居心地が悪い。

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