跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
すっかり業績の落ち込んだ加藤製陶は、及川に拾われていなければ未来はなかったと今ならわかる。しかし、再建に関わった岸本さんの発していい言葉ではないはず。

こんな人に千秋さんを渡すなんて、私のプライドが許さない。たとえ私が身を引いても、岸本さんだけはだめだ。

「加藤製陶に力がなかったのは認めます」

怒りで震えるのを堪えながら、毅然とした態度で言い返す。片手に感じる千秋さんの体温に勇気づけられて、岸本さんからいっさい視線を逸らさずにいられる。

「ですが、あなたにそれを言われたくはありません。岸本さんは、千秋さんからうちの再建を任された人ですよ。そのあなたから、加藤製陶を貶す言葉など聞きたくなかったです」

「な、なによ」

わずかに怯む彼女に、思いのたけをぶつける。

「初めてあなたがここへ来た日に、私は力強い味方を得られたと勇気づけられたんです。ほかの社員もそうです。及川社長にまかされたあなたについていけば、必ず加藤は持ち直すと信じました。加藤にとってあなたの存在は、ある意味希望だったんです」

社長や古株の社員に気を遣いながらも、岸本さんに意見を求めに行く社員の姿を何度か目にした。もちろんすぐに、気にせずにどんどん聞きけばよいと伝えられたが。
そんな社員らを平気で裏切る発言をした彼女を、私はどうしても許せない。

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