跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「悪かったな、愛佳。お前をいじめていいのは俺だけなのにな」

頭をなでながらそんなふうに言われて顔が歪む。張り詰めていた空気が、今の発言で緩んでしまう。

「い、いじめる……」

私の反応など、千秋さんはおかまいなしだ。

「岸本。お前はまだまだ男の多い職場で、必死に食らいついて自分の居場所を作ってきた。その実力は認める。俺はそんなお前を買っていたんだが、今回ばかりはお前らしくない。やり方が汚いんだよ。俺に気があるなら、正々堂々とぶつけろよ」

いやいやいや。結婚した身でありながら、自ら気持ちをぶつけろって煽るのは絶対におかしい。

でもそれはつまり、ふたりの間には上司と部下以外の関係はなかったと明言したようなものだ。

「せ、正々堂々とって……」

さすがの岸本さんも、千秋さんの言い方にうろたえている。

「そしたら俺も、堂々とふってやる。お前はそういう人間だと思っていたが?」

以前、夕食の席で岸本さんのことを話題にしたとき、千秋さんは誇らしげに彼女の有能さを語っていた。千秋さんは本当に彼女の能力を見込んで、この仕事を任せたのだろう。
そして今の岸本さんを見て、裏切られたと感じているのかもしれない。

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