跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
すっかり勢いをなくした岸本さんは、一瞬傷付いたように顔を歪めた。
それでもすぐに切り替えて、初めて会ったときのような仕事のできる女性の顔をして背筋を伸ばす。

「申し訳ございませんでした。社長が私を信頼して任せてくださったというのに、私はそれを台無しにしてしまいました。今後については、社長の指示に従います」

深く頭を下げた岸本さんは、次に私の方を見た。

「愛佳さん。不快な思いをさせて、申し訳ありませんでした。私と社長との間には、仄めかしたような関係はいっさいありません。私は、あなたに嫉妬して……」

岸本さんは、本当に千秋さんを好きだったのだろう。だからと言って、これまでの行動をなかったことにはできないが。

「あなたを傷付けてしまい、申し訳ありませんでした」

唇を噛みしめた岸本さんは、少し震える声で私に謝罪した。頭を下げた彼女に、これまで抱いた暗い感情が少しずつ晴れていく。

「謝罪を受け入れます」

いろいろと思うところはあるが、これ以上引きずっても意味がないだろう。

ここで『堂々とふってやる』とまで言った相手に気持ちを伝えないのは、彼女のプライドなのかもしれない。その強さは、私にはないものだ。

「岸本は会社に戻れ」

「はい」

岸本さんは最後にもう一度頭を下げると、静かにこの場を去っていった。

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