跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「痛っ。なんでデコピンなんてするのよ!」

思わず大きな声を上げた。
意味がわからない。この抱擁と、さっきの甘い笑みは罠だったのか。
千秋さんの胸元に手を押し当てて必死に距離をとろうともがいたが、力では敵わない。離さないとでもいうように、千秋さんの腕にますます力が込められた。

「愛佳の発想が、見当違いすぎるからだ。さっきも言ったはずだぞ。俺が愛佳を見初めたのだと」

「で、でも、私なんて子どもっぽいうえにガサツだし、仕事に関してもまだまだ未熟で。岸本さんに指摘されるまでもなく、そんなのは自覚していたし」

「そういうお前が気に入ったという俺の言葉は、信じられないのか?」

「え?」

反抗していた手を止める。

「俺はお前が気に入ったから結婚を決めたと、言ったはずだが」

「だってそれは、ペットのようなものというか……。それに、恋愛感情じゃなくて仕事のつながりありきだし」

見合いをした当初は、政略結婚だとしか捉えていなかった。
いきなりの結婚で気持ちは全く追いつかないし、流されるようにしてはじまった同棲生活にドキドキさせられてばかりいた。
成り行きのようにして体までつなげたというのに、妊娠に対する覚悟なんて少しもなくて、なんだか行き当たりばったりだ。

< 156 / 174 >

この作品をシェア

pagetop