跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「初めて会ったときから、愛佳を俺のものにしたいと狙っていた」

「最初から?」

「ああ」

呆然とする私の額に、千秋さんがそっと口づける。それになんの反応も返せないまま、ひたすら千秋さんを見つめ続けた。

「夫婦になって一緒に暮らしはじめて、愛佳を知るほどますます愛しくなる。俺はこんなにもお前を愛しているというのに……」

甘い言葉の攻撃に、頭がくらくらする。
理解が追いつかず、パンク寸前になってきたそのとき、千秋さんは本日何度目かの不穏な空気を醸し出した。

ベッドサイドへ腕を伸ばすと、一枚の紙を掴んで大げさにひらりと振った。それは一体なんなのかと視線を向けて、ひゅっと息を呑む。

彼の手にしている用紙の緑のインクを視界に捕えた途端、冷たい汗が背中を伝った。反射的に腕を伸ばして距離をとったが、すぐに詰められてしまう。

「俺の愛してやまない愛佳は、こんなものを用意していたとはな」

鼻先に突きつけられたのは、数日前に用意した離婚届だった。一文字も記入していないのは幸いだったと安堵しかけたが、そんなのは関係ないと千秋さん見てすぐさま悟る。

「ど、どうしてここに?」

「玄関に置いてあった愛佳の鞄に入れられてた封筒から、これがはみ出ているのが見えてな。抜いておいてやった」

苦しくて離婚届の存在から目を逸らしていたとはいえ、抜き取られたと気づいていない自分のずぼらさが嫌になる。

意地の悪い笑みに、なにをどこまで知られているのかと思案する。が、頭を悩ます時間を与えてくれるはずがなかった。

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