跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「愛佳は離婚するつもりだったと。ここに……」

用紙を脇に置いた千秋さんが、私の下腹部をさらりとなでる。

「俺の子がいる可能性もあるというのに」

「な、なんでそれを!?」

慌てる私を見る千秋さんの目が、すっと細められる。しまったと思ったが、もう遅い。

「妊娠、してるんだな?」

かまをかけたのかと責めたくもなるが、隠していた私が全面的に悪いのは明らかだ。
もうごまかしきれないと、首を縦に振って肯定する。

「コーヒー好きの愛佳が、ここのところめっきり飲まなくなった。代わりに、ココアかホットミルクばかりになったな」

そんなところまで見られていたとは、まったく気がついていなかった。

「ヒールのある靴を数足日替わりで履き替えていたのに、最近はスニーカーか平らな靴二足を使いまわすようになった。よく眠そうにしているのは、よっぽど仕事で根詰めているのかと思ったが、休日にしっかり寝た後でもうたた寝をしている。些細な変化だったがどうにも気になって考えてみれば、あるひとつの答えにたどり着いた」

どれだけ鋭いのだと、呆然と千秋さんを見る。

「愛佳のことだから、避妊をしなかったときに妊娠の可能性を考えたとしても、きっとそれは最初だけだっただろ? 仕事に夢中になってすっかり忘れていたに違いない。それがわかっていたから、代わりに俺が気をつけていただけだ。極めつけは、財布からはみ出していた病院の診察券」

「あっ……」

雑な性格が、こんなところでボロを出すとは情けない。私物を見られたことよりも、自分の至らなさが嫌になる。
これでは大人の女性などほど遠い。そもそも、女としてどうなのかというレベルだ。

< 160 / 174 >

この作品をシェア

pagetop