跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
お茶をいただきながらとりとめもない話をしていると、千秋さんのスマホが鳴り出した。

「すまない。ちょっと出てくる」

席を立って電話に応じる彼の背中を見送ると、それまでよりは少し落ち着いた様子で「今だから言えるんだけどね」と菊乃さんが口を開いた。

「愛佳ちゃんとのお見合いを伝えたときの千秋は、内心また面倒を押し付けてって迷惑がってたはずよ。さすがに私の恩人なら顔だけは出そうと、義理であの場に行ったの。断る前提でね。私に余計な口を挟ませないように、わざわざふたりだけで会いたいなんて姑息な手まで使って」

「まったくうちの孫は」とくすくす笑う菊乃さんには申し訳ないが、私も同じ気持ちだったと当時の状況に苦笑する。

「それが、帰って早々に愛佳ちゃんと結婚するって言うから、私があなたを勧めたとはいえ正直驚いちゃってね。あの腹黒い千秋だから、とりあえず結婚してしまえば私が静かになるとでも考えたのかしらって疑ってもみたけど……」

慈愛に満ちた視線を向けられて、私の顔にも自然と笑みが広がる。

「ふたりが一緒にいる姿を見て、安心したのよ。あの子もあんな柔らかい表情ができるんだって。愛佳ちゃんが好きで好きでしょうがないのが、すぐにわかったわ」

嬉しいけれど、恥ずかしい。頬を赤らめた私を、菊乃さんが「あらあら」なんてからかうから、ますます顔が火照ってしまう。

「愛佳ちゃん、本当におめでとう。困ったことがあれば、いつでも私を頼ってちょうだいね」

「はい!」

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