跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
平日にギャラリーへ足を運ぶ客数は、それほど多くはない。加藤ブランドを覚えているある程度上の年代の方が、プレゼント用やお祝い事に用意しようと見に来るのが大多数だ。

休日ともなると、さらにその子や孫の代を引き連れて、結婚祝いのお返しなどを選ばれるケースもある。若い人も、自分の親や祖父母の年代の方に返す物として、加藤ブランドなら間違いないと思ってくださっているようだ。

しかし、やはりかつての栄華だけにすがっていてはなかなか活路を見出せない。加藤ブランドを求める客層がある程度上の世代のみというのは、この先の需要の低下を如実に表している。

「若い人にも受け入れられるようなデザインを考えても、かわいい陶器がわずか百円で売られているしなあ……。しかも種類も豊富だし。お金をかけるのなら、陶器よりも服やバッグにって考えるのが当然だろうし」

若い世代に関心を持ってもらわないと、加藤製陶の未来はないに等しい。どうしたら注目してもらえるのかと、常に頭を悩ませている。
 
来客に出す茶菓子を確認しながらつらつらと考えていたが、答えはそう簡単に見つからない。

一体、千秋さんはどんな解決案を示してくれるというのか。この後の訪問に期待をしているが、同時に不安もある。無理難題は言わないだろうけれど、新しいチャレンジは以前からいる人間の反発を買いかねないのが気がかりだ。

いくつかの皿を手に取りながら、この後の訪問に思いを馳せた。

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