跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「はぁ……あっ……」

「愛佳」

慣れない感覚が怖くて目を閉じていたが、熱っぽく呼ぶ声に誘われてそっと開けた。

「俺を見ろ。お前は今、俺に抱かれてるんだ」

目を背けるなど許さないというような、鋭い視線に釘付けになる。

「お前の初めては、夫である俺がもらった」

事実を言葉にしながら私の中に現実として刻み込んでいく様は、必死さすら感じるようだ。

発する言葉は俺様なのに私に触れる手は優しくて、不安などなにもない。
蓄積されていく快感に慄いて無意識に伸ばした手を、大きな手が握り返してくれる。

「愛佳」

私を呼ぶ切なげな声に、胸の奥が疼く。
恥ずかしさは、もうとっくになくなっていた。ただひたすら、自分を翻弄する目の前の男を見つめ続けるだけ。

私に向けられるこのまっすぐな視線が、まるで好きだと言っているように勘違いしそうだ。

「千秋、さん」

彼が私の名を呼んだ数だけ返したくなってしまうのは、どうしてだろう。

「ち、あき……さ……あ、ああ……」

再び訪れた大きな快感に背中をのけ反らせると、少し後に千秋さんも動きを止めて、どさりと覆いかぶさってきた。

「愛佳」

まるで頑張ったと褒めるように頭をなでられて、嬉しさに目を細める。
横にどいた千秋さんは、そのまま私をぐっと抱き寄せた。まだ熱の冷めない素肌が心地よくて彼の胸元にすり寄ると、髪に口づけられていくのを感じる。

「お前は本当にかわいいな」

からかわれているといら立ちを覚えた言葉も、今だけは本当に褒められている気がして嬉しさに口角が上がる。
千秋さんに抱きしめられていると、心が満たされていくようだ。ずっとこうしていて欲しいだなんて、普段なら思いもしない望みを抱いてしまう。

「ゆっくり休め」

背中を優しくなでられているうちに、すっと意識を手放した。

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