桜が咲く頃に、私は
翠が何を言っているのか全くわからなかったけど、そんな私を見て呆れたようにため息をついた。


「それってさ、天川が早春のことを好きだから、キスに幸せを感じてるってことじゃないの?」


「え」


そんなことあるはずがないと思いながらも、もしもそうだとしたら、私とキスするたびに数字が減るのは理解出来る。


そしてあの日……キスした後に私を背後から抱き締めていたのも。


死ぬのが怖いというのに嘘はないだろう。


でも……それだけじゃなくて、もしもそういう感情があったとしたら。


「ダ、ダメだって! だって、私と空だよ? 毎日キスしないといけないのに、好きになったら……」


「それでも好きになっちまうのが恋ってやつじゃないのかね? あんただって、広瀬といずれこうなるってわかってて付き合ったわけだし」


「私は……広瀬との関係が終わったら数字の減りが元に戻るけどさ、私と空だったら、嫌いでも憎んでても、どんなに嫌でもキスしないと死んじゃうの! それにいちいち幸せなんて感じてたら、死ぬ日が早くなるのに!」


そう吐き出すように言ったけど……その可能性を考えないようにしていただけかもしれない。


私には広瀬という彼氏がいて、感情のいらないキスだったからこそ、罪悪感を感じつつも今まで出来ていたんだ。


そこに感情があることを知ってしまったら……。
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