桜が咲く頃に、私は
この日は、昼休みになっても広瀬は屋上に来なかった。


いつも二人きりで過ごしていた時間、本当なら今日も広瀬と一緒だったはずなのにと、隣で黙って付き合ってくれている翠を見ながら思う。


もう、終わりなんだな。


私が必死に謝れば、もしかすると広瀬は許してくれるかもしれない。


でも、空とのキスをしなくなるわけじゃないから。


自分勝手だけど、このまま終わらせるのが広瀬の為なんだろうな。


もうすぐ死ぬ私のわがままに、これ以上付き合わせるなんて出来ない。


どれだけ心が砕けそうになっても、身を裂かれそうになっても……それが私に与えられた罰だと受け入れよう。


償いにもならないかもしれないけど、広瀬を傷付けた当然の報いだ。


「……翠、あんた料理出来たっけ?」


「は? 何、いきなり。まあ、あんたよりは出来るんじゃない?」


「じゃあ手伝ってよ。今から帰って、いっぱい美味しいもの作るんだ。じゃなきゃ、今すぐにでもここから飛び降りちゃいそうだよ」


今日は夢ちゃんの誕生日。


死にたくなるくらいに辛いけど、悲しい顔でお祝いなんて出来ない。


吹っ切れたわけじゃないし、気を抜けば泣き出しそうだけど。


笑って誕生日をお祝いしてあげたいから。
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