桜が咲く頃に、私は
私がそう言うと、広瀬は小さく口をパクパクと動かして、少しだけ目を泳がせた。


何かを言いたいけど、言おうかどうか迷っているような。


しばらくの沈黙の後、意を決したように口を開いた広瀬。


「ごめん、桜井さん。僕は……卑怯な男だ。桜井さんを呼び出したあの日、実はもう生きるのが嫌で。死のうとしてたんだ」


そんな話を一度も聞いたことがなかったから、少し驚いたけど……私が生きる意味もわからずに生きていたくらいだから、いじめを受けていた広瀬が死にたいと思うのも無理はないか。


「だから死ぬ前に、好きだった桜井さんに告白して、ダメだったら死のうと思ってたんだけど……付き合ってくれて、僕は生きてていいんだって言われたような気がしたんだよ」


ああ、そういうことか。


それを悪く言うつもりはないし、私なんかに告るくらいだから、何か裏でもあるのかなと思ったけど……まさか私が広瀬が死ぬのを止めてたなんて。


妙な偶然もあるもんだね。


だって私もあの日、事故に遭ってこのまま死んでもいいと思っていたけど……付き合ったばかりの広瀬の顔が浮かんで、生き返ることを選んだんだもん。


私も広瀬も、お互いがお互いに生きる意味を与えてたんだね。
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