桜が咲く頃に、私は
「だからこそ、桜井さんが天川さんとキスしていたのを見て、僕は自分を否定されたように思えた。僕にとって、桜井さんが生きる全てだったのに、桜井さんからすれば僕は……そう思う価値もないその他大勢の一人なんだなって思ったら悲しくて」
そんなことはない。
本当に広瀬が好きだった……なんて、今の私が言えるはずがない。
「そんな中で声を掛けてくれた友紀ちゃんに救われたんだ。桜井さんと違って、僕と同じ歩幅で一緒に歩いてくれる子なんだよ」
「……そう。いい子なんだね」
「うん。桜井さんは僕の世界を変えてくれた。優しくて大好きだったけど……もう、僕に合わせなくて良いから。さようなら。桜井さん」
私に勝てる要素がないことなんて、もっと早くにわかっていたことだ。
名前を読んでもらえない時点でね。
「わかった、言ってくれてスッキリしたよ。じゃあね。広瀬の横は……心地良かったよ」
そう言った瞬間、私の中で引っ掛かっていたものが無くなったような気がした。
病室から出て、空と一緒に病院の出口へと向かう。
心にぽっかりと穴が空いたような寂しさを感じて、でも泣かないようにしていたけど……。
「早春、我慢しなくていいんだぞ。いっそ泣いて、全部忘れろよ。約束通り、背中を貸してやるからさ」
空のその言葉に耐え切れなくなったのか、私の目から涙が溢れた。
しがみつくようにして空の背中に顔を埋めて、しばらく泣いたけど……思ったより早くに涙は止まった。
きっと心はわかっていたんだ。
もう、随分前に広瀬とは終わっていたんだって。
そんなことはない。
本当に広瀬が好きだった……なんて、今の私が言えるはずがない。
「そんな中で声を掛けてくれた友紀ちゃんに救われたんだ。桜井さんと違って、僕と同じ歩幅で一緒に歩いてくれる子なんだよ」
「……そう。いい子なんだね」
「うん。桜井さんは僕の世界を変えてくれた。優しくて大好きだったけど……もう、僕に合わせなくて良いから。さようなら。桜井さん」
私に勝てる要素がないことなんて、もっと早くにわかっていたことだ。
名前を読んでもらえない時点でね。
「わかった、言ってくれてスッキリしたよ。じゃあね。広瀬の横は……心地良かったよ」
そう言った瞬間、私の中で引っ掛かっていたものが無くなったような気がした。
病室から出て、空と一緒に病院の出口へと向かう。
心にぽっかりと穴が空いたような寂しさを感じて、でも泣かないようにしていたけど……。
「早春、我慢しなくていいんだぞ。いっそ泣いて、全部忘れろよ。約束通り、背中を貸してやるからさ」
空のその言葉に耐え切れなくなったのか、私の目から涙が溢れた。
しがみつくようにして空の背中に顔を埋めて、しばらく泣いたけど……思ったより早くに涙は止まった。
きっと心はわかっていたんだ。
もう、随分前に広瀬とは終わっていたんだって。