桜が咲く頃に、私は
家に向かって、空と手を繋いだまま歩く。
お互いに何も言わずに、空は広瀬とのことで私が落ち込んでいるとでも思っているのか気を遣っているようだ。
そんな風におかしな感じになるのが嫌で、私は葛西が言った言葉を思い出していた。
そして、小馬鹿にしたように話し始める。
「高校生になって、可愛かったら……ねぇ? 空はそんなにモテてたんだ? まあ、花子は美人だったし、否定するつもりはないけどさ」
「なんでその話に……葛西のやつ。よりによってお前の前で言うことないだろ」
広瀬のことを話すとでも思ったのか、まさか自分の過去の発言を突っ込まれて焦っているみたいだ。
過去の出来事とはいえ、調子に乗っていた発言を恥ずかしいと思っているのか、さっきからため息の数が尋常じゃない。
どうやら葛西の話だと、あの後少しは気にしてくれていたようだけど、気にするくらいなら泊めてほしかったな。
「……でさ、どうなの? 高校生になりました。家に泊めてもらってます。空の彼女じゃないけど、ちょっとは可愛いと思ってくれてんの?」
空の手を離し、橋の上の歩道で尋ねると、ゆっくりと空は振り返って私を見詰めた。