桜が咲く頃に、私は
23時。


私と空のスマホには、鬼のように夢ちゃんから電話が掛かっていたけど、私達は無事で、日が変わるまでには帰ると伝えたら少しは安心したようで。


この様子だと、帰ってからのお説教が待っているのは間違いない。


あちこちに移動したから、この時間になってようやく最寄り駅まで戻って来た。


「私の誕生日の日……15歳になった日、家出した私は、ここで空達と出会ったんだ」


クリスマスの雰囲気で溢れる駅前。


あの時とは少し違う空気感だけど、懐かしく思える。


「早春は迷子の仔犬みたいな目をしてたな。空腹で、不安そうな目をしてた」


「それなのに泊めてくれなかったわけ? 酷いよね」


「そりゃあそうだろ。中学生を泊めたとか、それだけでもまずいし、一度泊めたら出て行きそうにもなかったし」


現に、私は空の家に転がり込んで生活してるわけだから、その予想は当たっていて何も反論出来ない。


だから私は友達の家やネットカフェを泊まり歩いていたわけだから。


「ここで弾いてたんだ。あの花壇の縁に座ってた早春が近寄って来て、しばらく聴いててさ。それで言ったんだよ。『泊めてくれ』ってさ」
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