桜が咲く頃に、私は
「早春の誕生日って……2月10日だよな? 残り日数がそれだと……届かないか」


今のままだと、毎日2減ってしまうから私の誕生日には届かない。


16歳を目前にして死んでしまうのかと思うと、少し寂しさもあった。


「もういいよ。私は残りの日を、空と一緒に生きるって決めたんだから。15歳でも16歳でも、私は私……でしょ?」


「……そうだな。どんな早春も俺は愛してるから。早春にめぐり逢えて……良かった」


そう言って私の頬を撫でる空に、フフッと微笑んで。


「残念でした。今更それくらいの言葉じゃ、私の余命は減らないよ」


日に日に、死への恐怖と不安が大きくなって行くから。


昨日は喜べたことも、今日は死に飲み込まれて喜べなくなる。


ゆっくりと、蝕むように死が迫っているのを実感していた。


「可愛くねぇの。まあ、今の俺達じゃ素直に受け止めないってわかってるけどさ」


「本当に可愛くないって思ってる? だったら、寝るまで手を握っててあげるのやめようかな」


「嘘。誰よりも可愛いと思ってる」


たまにこういうことがある。


一緒にいても空が眠れなくて、日を跨ぎそうになってしまうことが。


そんな時は、お互いの余命を減らしてキスをする。


横になっている空が私の首に手を回して、引き寄せて唇を重ねた。


空「24」、私「43」。
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