桜が咲く頃に、私は
「いきなりどうしたの? しっかりした人……か。全然だったよ? 何でも大雑把で適当で、お兄ちゃんよりガサツでさ。でも、私とお兄ちゃんのことが大好きで、鬱陶しいくらいに愛情はもらったかな」


「話には聞いてたけど……やっぱりそうなんだ」


「お姉ちゃんがいる場所で、お姉ちゃんみたいにあぐらをかいて夜空を見上げててね。それでビールを飲んでたんだ。後ろ姿なんてお姉ちゃんそっくりだったよ」


その笑顔から、とても良い思い出があるんだなというのがわかる。


このアパートから離れないのは、恐らくお母さんとの思い出があるから。


……私とは本当に正反対だよね。


「だったら喧嘩とかも無さそうだね。いつも仲が良かったでしょ?」


私とお母さんは、別の意味で喧嘩は無かったけどね。


「全然。もうね、皆毎日喧嘩ばっかりだよ。お母さん、料理は物凄く上手だったけど、後片付けとか掃除が出来なかったから、いつも私と喧嘩してたし。お兄ちゃんなんか、だらしないお母さんに怒ってばかりだったしね」


「そんなに喧嘩ばかりだったのに、仲は良かったんだ? 不思議だね」


うちのお母さんも料理はしていたけど、掃除は苦手だったし、夢ちゃんのお母さんと似ているのにこの違いは何なんだろう?
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