双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
そこには粉々に砕け散った植木鉢があった。

まさか。

とっさに頭上を見上げる。

あそこから私を狙って投げたの?

ビルの屋上に人影が見えたが、逆光でその顔を確認することはできなかった。

やはり犯人の目的は旅館ではなく、私自身なんだ。

見えない敵の姿に恐怖が込み上げてきて震えが止まらない。

しばらくして西谷さんが戻ってきたが、植木鉢を落とした犯人を見つけることはできなかったようだ。

西谷さんは何度も私に向かって謝ったが、西谷さんがいてくれたからこそ私はケガなく済んだので、感謝したいくらいだ。

このビルは古く防犯カメラもなく、その植木鉢が私めがけて投げられたという立証もできないので、警察へ相談しても事件性はないと判断される可能性が大きいというのが西谷さんの見解だった。

エスカレートしていく嫌がらせにさすがに気持ちが沈んでいく。

その日はとても仕事ができるような精神状態ではなくて、早退させてもらい家で休むことにした。
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