セカンドマリッジリング ―After story—
花那としては出来るだけ颯真の負担になる存在にはなりたくない、だが離れている間ずっと心配かけてしまうのも心苦しい。何も出来ずに颯真の通話中、落ち着きなく視線をさ迷わせていた。
しばらくして通話を終えた颯真が微笑みながら花那の隣に戻ってきた。
「急いで準備をして。そうだな、一週間分くらいの着替えや必要なものを用意してほしい」
「え? いきなりどうして……」
突然の颯真の言葉に彼女は戸惑う。ホテルでもいいと先に言い出したのは花那の方だが、まさか本当に颯真はそれを実行する気なのだろうかと。
稼ぎのある颯真がしばらくの間ホテルなどで過ごしてもなんの問題もないが、それが自分がしっかりと義母や義父そして義妹に対応できないからだと思うと花那は申し訳なさを感じてしまう。
「ごめんなさい、颯真さん。私、いつもあなたに迷惑かけてばかりで……」
「花那のせいじゃない、俺がきちんと両親を納得させるまで少し不便かもしれないが我慢してほしい。君だけは俺が守りたいんだ」
強い視線でそう言われれば、花那はもう何も言えなくなる。一番大切なのはお互いに相手の存在に違いないから、その気持ちは痛いほど伝わってくる。
颯真に手を引かれ立ち上がると、花那は大きなボストンバックとスーツケースを取り出して片方を颯真に手渡した。彼はスーツケースを受けとるとクローゼットからスーツを取りだし丁寧に入れていく。そんな颯真の様子を窺いながら、花那も自分の荷物の準備を始めた。