一途な部長は鈍感部下を溺愛中
掴まれた腕はエレベーターの中ですぐに離され、無言のまま三人でデスクに戻る。
ふう、と小さく息をつきながら自分のデスクに荷物を置くと同時、「佐藤さん」と隣のデスクに座る松下さんから声を掛けられた。
松下さんは三十代後半の、眼鏡の奥の瞳が優しそうな穏やかな男性だ。……ちなみに、半年前は他の女の子がそこに座っていた。
「さっき総務部の田中さんから電話があって、かけ直して欲しいって」
「あ、わかりました!ありがとうございます」
丁寧に内線番号まで書かれたメモを受け取り、お礼を言う。
早速かけ直そうとしたところで、今度は斜め前の席から声を掛けられた。顔を上げると、戸田さんが心配そうにこちらを見ている。
「もし何か面倒なお願いとかされそうだったら、遠慮なく俺とか松下に代わってくれていいからね。佐藤さん優しいから、わざと佐藤さんにしか電話しない奴も居るんだよ」
そんな戸田さんの言葉に、松下さんも頷いてくれている。
戸田さんは四十代前半の明るい男性で、素敵な奥様と可愛いお子さんが二人いて、子煩悩の良いお父さん、というイメージだ。