一途な部長は鈍感部下を溺愛中
だって開けると……真正面に部長席があるんだもの。
ここで先に部長が出社していた場合……いや、大抵の場合出社してるのだが、そうすると真っ先にかち合うのが琥珀色の瞳だった。
それだけで心臓が止まりそうになるから、ここ最近は視線を伏せながら中に入っている。
(でも、今日は……)
今日はちゃんと顔を上げて、目を見て挨拶をしよう。いくら恥ずかしいからって、目も合わせず挨拶するなんて、失礼過ぎる。
よし、と決意を拳に込めて、ドアノブに手を伸ばした。その時。
「おはよう」
ふ、と吐息が耳殻をなぞり、色気のある声が流し込まれる。
その気配に声にならない悲鳴をあげながら身を固くし、恐る恐る顔だけを横に向けた。
すると、私の肩越しに今まさに考えていた綺麗な顔があり、その近さに目が回りそうになる。やっぱりその瞳は、柔らかく笑んでいた。
「どうした、入らないのか」
コーヒーを買いに行っていたのか、片手に紙コップを持った部長が首を傾げながらドアを開けてくれる。
私はしどろもどろになりながら謝ったり頭を下げたりし、ドアをくぐった。……挨拶を、返すことも出来ずに。