一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「見つかって良かったです。では」
そう軽く会釈して踵を返そうとすると、「あっ!」と後ろで声が上がり、振り向く。
すると、どこか焦ったような顔で西村さんがこちらを見ていた。その手は、中途半端な位置で宙に浮いている。
「あ、何かお礼を……でも今、俺、何も持ってなくて」
「あっ、いえいえ、気にしないでください。拾い物をしただけですし」
パタパタとジャケットのポケットを探る西村さんに、こちらも慌てて首を振る。
「そういうわけには! ごめん、今これしか無いけど」
西村さんはそう言って、丁度ポケットに入っていたらしい何かを私の手に握らせた。
なんの躊躇いもなく手を取られ、ちょっとびっくりする。
彼の手が離れたあとで握らされた拳をゆっくりと開くと、それは苺の絵がプリントされた飴玉だった。
「良ければ休憩につまんでください」
ニカッと太陽のような笑顔に圧倒されながらただ頷き、私は二人の笑顔に見送られながら総務部を後にした。
すっごい明るい人だったなあ……。