一途な部長は鈍感部下を溺愛中
ちょっと時間経ちすぎちゃったかな、と早足で席まで戻り、貰った飴はマグカップの側において一息つく。
ややあって、私が戻るのを待っていたのか、部長がクリアファイル片手にこちらへ近付いてくるのが見えて、ドキッと心臓が跳ね始めた。
「佐藤、これ返しておくな。よろしく」
「は、はい!」
部長の押印が必要だった書類たちだ。特に不備はなかったらしい。
ホッとしながらファイルを受け取るが、部長はその場から去ろうとせずじっとこちらを見つめていた。
「あ、あの……?」
「……珍しいな。君がこういうのを食べるのは」
部長の視線が横に逸れる。それを追うと、先程貰った飴に注がれていることに気付いた。
確かに自分ではあんまり買わないかも、と頷く。
「今さっき、色々あって総務の方から戴いたんです」
「へえ」
なるほどな、と言いながらまた部長の瞳が私を映した。そしてやっぱり、視線は逸らされない。
「……」
「……」
どうしてこんなにじっと見てくるのかは分からない。でも、今日はなるべく目を逸らさないって決めたから……。