一途な部長は鈍感部下を溺愛中
もうどうすることも出来なくなった私を救ってくれたのは、背後からやってきた戸田さんだった。
「こら、佐藤さん虐めるなよ。セクハラだぞ」
そう言って、手にしていた書類で部長の頭を叩く。
紙の束だから痛くはないだろうけど、部長は反射的に「いて」と言いながら、恨みがましくジロリと戸田さんを振り返った。
「指一本触れてないんだが」
「そーいう問題じゃないのよ。目がね、もう、アウトだから」
ほら早く席に戻った戻った、と背を押され部長が席に戻っていく。
助かった……。安堵の息を吐き、心の中で戸田さんに深く感謝するのだった。
数日後。
まだまだ様子のおかしさは拭えないけれど、どうにか目を逸らさずに話せるようにはなった。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ここ最近の部長はいつにも増して私をじっと見つめている。それに耐えるため目を逸らさずに頑張る私を、どこか嬉しそうに。……というか。
「……揶揄われてるよね」
休憩のために立ち寄った給湯室で、シンクに両手をついてため息をつく。
こっちは毎日毎分毎秒、騒がしい鼓動で寿命を縮めながら頑張っているのに、部長のあの顔は完全に面白がってる。
悔しいなあ、と思いながらも、何が出てくるか分からない薮をつつく無謀さは持ち合わせいない。