一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「あっ」
ウンウン悩みながら項垂れていると、ふいに声が聞こえてきて、慌てて顔を上げた。
「すみません、すぐ退きま……あっ」
会議室に近い給湯室だったから、誰かが片付けに来たのかも。そう思い慌てて顔を上げ、目を丸くしながらこちらを見つめる二つの瞳に、私もまた目を見開いた。
刹那の沈黙の後、黒檀の双眸が柔らかく細められる。
「お疲れ様です! この間はありがとう」
そう言って空になった紙コップをお盆に乗せながらドア枠を潜ってきたのは、西村さんだった。
「お疲れ様です」
ぺこりと頭を下げて、邪魔かな? と思い入れ違いで出ようとしたが、「休憩タイム?」と笑顔を向けられタイミングを逃してしまう。
「ちょっと息抜きで……西村さんは会議終わりですか」
「あー、息抜き大事。そう、俺下っ端だから……」
へへ、と白い歯を見せて笑う西村さんの明るさが微笑ましくて、こちらまで頬が緩む。
思わずクスリと笑うと、つぶらな瞳がきょとりと瞬いた。