一途な部長は鈍感部下を溺愛中
まるで断罪されるのを待つ罪人のような気持ちで居た視察の日は、あっという間にやってきた。
当日は大宮駅での待ち合わせで、そもそも駅に来るのが初めてだし、思ったよりも広いし……部長と会えなかったらどうしよう!と朝から一人狼狽えていた。
しかし、それが杞憂だったと思い知るのは、それまで思い思いに過ごしていた周辺が、まるで示し合わせたかのようにざわめいた時だった。
「え、ねえめっちゃイケメン居る!」
「誰だろ、俳優?」
横から聞こえてくる女子高生のヒソヒソ話に、えっ、有名人?とちょっとミーハー心でそわりと顔を上げ、その女子高生達の視線を追って、ポカンと口を開ける。
確かに、すごくオーラのある人が改札口からこちらへと真っ直ぐに向かってきている。すれ違う人たちの視線を独り占めして。
でも、違うんです。その人、俳優とかじゃなくて──。
ふと、伏し目がちだった目線が上げられ、ぱちりと視線が絡む。
それと同時に蜂蜜を溶かしこんだような双眸がゆるやかに細められ、辺りから黄色い悲鳴が上がった。私は「ヒィ」と小さく純粋な悲鳴をあげてしまった。