一途な部長は鈍感部下を溺愛中
長い足が、躊躇うことなくこちらへ向かう。
そして、俳優かと間違われていたその人は私の前に立ち、突き刺さるような周囲の視線をものともせず、私に話しかけた。
「悪い。待たせたな」
「い、いえ!」
待ってはない。待ってはないけど早くここから逃げたい。
さあ行きましょう!一刻も早く!……とは言えないので、流れ弾のように私に撃たれる視線と、これからの緊張でカチンコチンな腕と足をどうにか動かし歩き出すと、彼は不思議そうな顔をしながらも隣に並んでくれた。
段々と人集りから離れていく中、後ろからぽつりと聞こえた「……マネージャー?」の声に、いやこの人ただの一般企業の部長です。そして私はただの部下。と心の中の私は冷静に返すのだった。
支社に実際には赴いたことが無いとはいえ、場所はしっかり予習してきてある。
そのため、緊張しながらも迷いなく歩いていれば、それまで静かだった東雲部長が突然「……フッ」と笑いだしたので、驚きのあまり思わず足を止めた。
「えっ、ごめんなさい道間違ってますか!?」
それとも、行き方を間違ってたんだろうか。