一途な部長は鈍感部下を溺愛中
振り向くように顔を上げると、片手をついて部長がこちらを見下ろしていた。
目が合うと微笑まれて、開いていたファイルを思わず勢いよく閉じてしまう。その勢いで生まれた風に前髪が弄ばれ、乱れたそれを部長の長い指が整えるように触れてきた。
「どうだ。帰れそうか?」
「は、はい。もう急ぎの仕事は無いので」
「なら、少し早いけどそろそろ上がるか」
そう促され、自然な動作で手の中のファイルが攫われる。
「君は自分の支度を進めてな」
慌てて取り返す前に先手を打たれ、お茶目に片目を瞑られ制されてしまった。
その軽妙な身のこなしに何も出来ず、言われるがまま素直にパソコンを閉じる。
コートを着てマフラーを巻いていると、身支度を終えた部長が隣にやってきた。
待たせてしまう! と焦れば焦るほど指先が縺れ、上手く結べない悪循環。それにまた更なる焦りを募らせながらもたもたと指先を動かしていると、その手を部長に取られた。
そのまま指先を握られ、カシミヤの生地から離される。そして、黒い手袋に包まれたしなやかな指先が、あっという間に綺麗なポット巻きを完成させた。