一途な部長は鈍感部下を溺愛中
しかし、丸かった目が三日月に歪み、指が潜り込んでくるように絡んだ。
全ッッッッ然離してくれる気配ナシ!
「今はプライベートだからな」
そう明るく言った部長から解放されることは叶わず、会社を出るその瞬間まで、あちこちから飛んでくる視線の矢は止まらなかった。
そして、手を繋がれながら駅まで歩き、電車に乗り、どこか浮ついた空気とともに揺られること十数分。
背の高いビル群のひとつが、今夜の目的地だった。
見上げるほど高い建物と、街のイルミネーションに負けないくらい煌々と漏れ出る光に圧倒される私の背に、部長が手を添える。
部長を見上げると、どうした? とでも言い出しそうな顔で微笑んでいた。
「あの、私、普通に私服ですが!」
オフィスカジュアルと言えば聞こえはいいが、ラフすぎず、しかしフォーマルとは言えない普通の服だ。
こんな、明らかに敷居の高いビル内のレストランにそぐう装いではない。
「大丈夫、大丈夫。そんなに堅苦しくないから」
ほら行くぞ、とだだっ広いロビーに押し込まれてしまう。