一途な部長は鈍感部下を溺愛中
そりゃ、部長はスーツだからいいかもしれないけど……!
一言いってくれれば、綺麗目の服を着たのに。恨みの篭った視線を向けるけど、穏やかな微笑みで軽く交わされ、腰を抱かれながらエレベーターに乗せられる。
そして高層階目掛けて大きな箱は昇り、あっという間にお高そうなレストランへと導かれた。
部長が慣れた様子でホールスタッフと言葉を交わしている間に、彼の背中越しにそっと中を覗く。
結婚式で着るようなドレス姿の女性も居るけど、思っていたよりは多くない。私と同じ、仕事帰りのように見える人もそれなりに居て、密かに胸をなでおろした。
そうこうしている間に会話は終わったようで、また自然な流れで腰を抱かれてスタッフの後を着いていく。
こんな煌びやかな場にも負けないくらい部長の存在は際立っていて、通り過ぎるテーブルからうっとりと惚けるような視線を幾つも受けた。
ただ隣に立っているだけの私ですら、こちらに送られる視線のどれにも眼中に無いと分かっていたのにそわそわしてしまった。だというのに、当の本人はちっとも気にしていない。
きっと無遠慮に見られるのなんか日常茶飯事なのだろう。一瞥すらしていなかった。