一途な部長は鈍感部下を溺愛中
揶揄いの色を含んだその言葉で自分が彼に見惚れていたことを知り、カッと頬に熱が灯る。
「見惚れてたのか?」
誤魔化す前にそう暴かれてしまい、頬どころか全身に熱が回るようだった。やがて、上手い言い訳も見つからず、私は観念して項垂れる。
「………………す……」
「うん?」
「そう、です」
もうヤケだった。
こんな素敵なお店に連れてこられて、頼り甲斐のあるところを見せられて、見惚れない方が難しい。
「見惚れてました……ダメですか?」
無意識のうちに拗ねたような音が混じり、唇の先を尖らせる。
ちらりと視線を送ると、部長は目を丸くしていて、やがて顔を覆ったかと思うとそれはそれは深〜いため息を吐き出した。
「ダメだろそれは……完敗だ」
「えっ」
だ、ダメなの? と焦っていると、指の隙間からほのかに朱くなった目尻が覗く。
「……本当に君には敵わないよ」
「ええ……?」
部長が私に敵わないことなんて、ひとつも無いに決まってる。むしろ、私は部長に勝てるところなんてひとつも見当たらない。
首を傾げる私に、「揶揄った分だけ返り討ちにあうな」とどこか苦い顔で呟いた部長は、それから口数が少なくなった。
やがてワインや料理が運ばれ始め、クラシカルな音楽と共にゆったりとした雰囲気が流れると、部長はいつもの調子を取り戻したようで、料理やお酒にまつわる話や仕事であった出来事を面白可笑しく披露してくれる。